肉筆の楷書としては、現存する唯一の作品である。皇子の教育係に転任するよう命じられた辞令(告身)を自ら書いたものであることから、自書告身帖とも呼ぶ。顔真卿72歳の書。
起筆が蚕の頭の様にぼってりしていて、終筆が燕のしっぽの様に段違いになっている「蚕頭燕尾(さんとうえんび)」という筆法が特徴的である。
また、一見、肉感的とも思われがちであるが、縦画は変化しているのは線の外側であり、内側は直線的であり、肉厚・骨太な線質である。
なお、「明朝体」は、この顔真卿の書から作られている。
顔真卿(がんしんけい)は、唐代の政治家・書家。
「蚕頭燕尾」という独自の筆法を編み出し、時代を代表する革新性を持っており、欧陽詢・虞世南・褚遂良と合わせ「唐の四大家」と称される。また、「蔵鋒」の技法を確立したことでも知られる。
伝説では、顔真卿が貧しかった頃、屋根裏に染みた雨漏りの痕を見てこの書法を編み出したといわれている。
建中告身帖の他に、楷書では『顔氏家廟碑』『麻姑仙壇記』『多宝塔碑』『顔勤礼碑』などがある。行書では、その腕前が王羲之に匹敵するとされ、最大級の賞賛を受けている。特に『劉中使帖』『争座位帖』『祭姪文稿』が有名。
また、『争座位文稿』『祭姪文稿』『祭伯文稿』は、「顔真卿の三稿」と呼ばれ、草稿であるにも関わらず高い評価を受けている。
●台東区ヴァーチャル美術館(建中告身帖)
https://www.city.taito.lg.jp/virtualmuseum/shodo/shodo_0201/003.html
●ウィキペディア(顔真卿)https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E9%A1%94%E7%9C%9F%E5%8D%BF