撮影:菊池苔鳳
雁塔聖教序(がんとうしょうぎょうじょ)は、『西遊記』で知られる玄奘三蔵法師が天竺(インド)から持ち帰った仏典を翻訳した功績を称え、太宗皇帝と皇太子の玄宗が建碑させた。陝西省西安の大慈恩寺内の大雁塔に現存する。保存は極めて完好で、仏教史的にも重要なものである。
この書は、褚遂良の天才ぶりと努力の跡が遺憾なく発揮されたもので、書の歴史上「最も美しく洗練された軽快な楷書」と評され、後の顔真卿にも影響を及ぼした。
褚遂良(ちょすいりょう)は、初唐の三大家に数えられる。太宗皇帝が虞世南や欧陽詢を指導に当たらせ、書道奨励を行ったことで、褚遂良もその指導を受けた。六朝期から発展し、隆盛期を迎え、やがて完成へと至る隋・唐の楷書の中で、この褚遂良は一際異彩を放つ。
楷書に、篆隷のみならず、行書の筆法をも採り入れて完成させた。この褚遂良の筆法を「褚法」と呼び、「痩金体活字」の原型ともなっている。